代表挨拶


「大空を自由に飛びたい! そんな機械がつくりたい」
そんな単純な想いから、航空工学を学びに名古屋にやってきました。
一方で地球環境問題にも関心があり、当時世界的な話題となったオゾンホール解明の刺激を受けて、地球環境のメカニズムを深く理解したい、という想いから、大学院では地球大気の研究に関わらせて頂きました。

その後も「大空への憧れ」と「地球環境と科学技術」という二つのテーマで研究所や企業で仕事をさせていただきました。ロボットやAI、データサイエンスといった様々な先端科学技術に触れながら仕事をすることが出来たのは、プログラミングが出来たおかげ、といって過言ではありません。プログラミングを業務に生かすことで自分の可能性が大きく広がる経験を何度もしてきました。

やりがいのある充実した仕事を続けてきましたが、娘が生まれるとともに、次世代のこどもたちの生きる世界というものが、強く気にかかるようになりました。
21世紀、それは世界的に見れば、人口爆発によるエネルギー・食糧等資源の枯渇、貧困、温暖化といった問題が渦巻き、日本ではさらに財政悪化や少子高齢化による労働力不足が加わり、未来への不透明感は増すばかりです。
特に少子高齢化は日本で深刻な問題として取り上げられていますが、実は21世紀の世界的な問題であり、少子高齢化・先進国である日本がどのように切り抜けていくのか、世界中が見守っているところでもあります。

科学技術は万能ではなく、限界も、問題もあります。過去の歴史を見れば、科学技術は負の遺産、という人もいるでしょう。
しかし、だからといって全てを捨てて江戸時代の生活に戻ろうとしても、その生活様式では今の人口を養いきれず、科学技術を駆使した現実解を探さなくてはならない、と私は考えています。

そこで、『科学技術をはじめとする人類の知見を駆使し、持続可能な社会の実現を目指す』、その第一歩として、21世紀を生きる子供達に、人類の知見とそれを活用する力を早く身につけてもらいたい、と考えています。

20世紀末から21世紀にかけて、家庭にコンピュータが入り込む時代となりました。
これからの10年で、コンピュータは家電、住宅設備、自動車、公共施設など生活の隅々に入り込み、情報を取り込みながら私たちの生活により深く関わってくる時代となります。
コンピュータに何ができるのか、どんな可能性と限界を持っているのか、様々な職業で、コンピュータに対する理解力が必要となっていきます。物理学、生物学の研究ではもちろん、ものづくり、デザイン、アート、エンターテイメント、医療などコンピュータの普及により、大きな発展を遂げてきました。会社の事務作業でも、エクセル、ワードといったツールを使わずに済ますことは不可能といっていい世の中です。
こどもたちが自分の進路を決めていくうえでも、コンピュータを理解していることは大切なことです。自分のやりたい仕事が、最新のAIの方が上手に安価にこなせることが分かっていれば、その道に進むのは無駄である、とか別の技能をさらに身に付けることでAIが入り込めない仕事を目指す、など考えることができるからです。

これは遠い未来の話ではありません。2018年、『AI VS. 教科書が読めない子どもたち』という書籍がベストセラーになりました。その中で、「ロボットは東大に入れるか」という人工知能プロジェクトの成果が報告されており、書籍発行時点で、この成果物であるAIシステム「東ロボくん」は、予備校模擬試験の判定で、私立大学の上位20%に対して合格可能性80%という成績を獲得した、とあります。
この事実が物語ること、それは、目の前の課題に対し、ネットや書籍等で得られる情報だけで解決できるような仕事は、いずれAIに取って代わられることを意味します。AIにできない仕事をするためには、何が真の問題なのかを見抜く力(問題提起能力)や、与えられた知識だけではなく、それに自分の考えを組み込んで解決策を見出す力が必要になってくるのでしょう。
逆にそういった能力を持った人が、AIを駆使して新しいものを生み出そうとするとき、冒頭で述べたような、今我々が抱えている問題の一部でも解決されるのではないだろうか、そんな期待をしています。

私はこれまでベンチャー企業や研究所で、プログラミングという道具を使って、ロボット、人工知能、データ解析などの実務をこなしてきました。それらの業務の中では、例えば一人乗りヘリコプタの自動制御システムのような、まだ先例のない課題に対し、自分の持つ知識や調べた情報を組み合わせ、オリジナルの解決策を見出して仕事を進めてきました。
この経験をベースに、どうやって自分の人生にプログラミングをうまく生かしていくのかを、子供達に分かりやすく伝えていきたいと考えています。
また、自分の頭で仮説を立て検証し、発表をして理解・共感を得て人を動かし、 新しい道を切り開いていく、大学院からの研究者生活では、そんな経験を積み重ねてきました。21世紀という不透明な時代には、そんな科学的思考能力が理系・文系を問わず求められるのではないでしょうか。実務経験の中にそんな考え方を織り込ませながら、21世紀型教養を身につけていってもらいたい、そう考えています。

 

代表紹介

渡邊 征春

1969年生まれ

学歴:
私立海城高校(東京都) 卒業
名古屋大学 工学部 航空学科 卒業
名古屋大学大学院 理学研究科 満了
博士(理学)を名古屋大学より授与

主な職歴:
JAXA(宇宙航空研究開発機構)
産業技術総合研究所