いままであった職業が、AIに取って代わられる、そんな話が数年前からニュースを賑わしてきました。
正確には、職業自体が奪われる、ということではなく、その仕事の中の、AIが得意とする内容はAIが代わって処理してくれるようになる、ということになると思いますが、職業によっては、やるべき仕事が大きく様変わりするはずです。
例えば医師。
画像診断は、膨大な数の画像から、わずかな異変を見つけ出すという、非常に労力のかかる作業であり、見落とし防止の観点からも異常検出の自動化に関する研究が進められてきました。
将棋や囲碁、チェスの世界でAIが人間に勝利するというニュースが出てくる中、2017年、がん細胞の画像判定において、AIが医師よりも高い正解率を出した、というニュースが流れました:
すでに手術ではロボットの導入が進んでおり、現代の医師は、人類の最新技術を使いこなさなければならない立場に置かれています。
このように、これから我々の生活にAIがどんどんと入り込んでくると、一つ大きな問題に直面します。
それは、AIの出した結論と、我々のこれまでの常識が食い違っているとき、どう行動すべきか、ということです。
特に、そのAIが、これまで人間が気づかなかった現象を幾つも発見した実績を出しているとき、人の命を左右する状況で、納得のいかない結論をAIが出した場合、医師は重大な決断を迫られることになります。
AIはデータを食べれば食べるほど、的確な判断をするようになります。ただしAIも万能ではありません。AIにとっての経験となる、入力データに誤りや偏りがあれば、間違った答えを出す可能性も十分にあります。なので、それまでどんなに正しい判断を下していたとしても、人の命を預かる医師は、AIの答えを鵜呑みにはできません。
AIの出した結論と、我々のこれまでの常識が食い違っているとき、医師はその結論がどうして出てきたのか、納得のできる結論が出せるまで、データ解析を徹底的に行う必要に迫られます。
AIの出した答えに問題がないか、データを読み取れる技能=データ解析技術を持つことで、より上手にAIを使いこなすことになるでしょう。そのためには、AIのもとであるコンピュータ・プログラムと、AIのエサとも言えるデータというものに対する理解を深めることが重要です。
これからの医師は、AIにコントロールされることなく、AIを自在に操るために、ますますデータ解析の力が必要となってきます。
AIが身近になればなるほど、画像解析を専門の人に任せるのではなく、自分で対応しなければならなくなるはずです。
それは医師だけの話ではありません。
プロ棋士の間では、AIの打ち手から新しい考え方を学ぶ研究会も流行っているそうです。
医師に限らず、AIの出した答えから学び、より良い解決策を見出す、これがこれからのAI共存時代に生き残る最良の戦略ではないでしょうか。
参考: これからの医師がAIとどう付き合っていくことになるのか、AIと深く関わる医師の論説:
臨床医は驚くほど、AI活用に前向きだった